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美術館

特集展示「令和2年・3年度奉納神宮式年遷宮奉賛美術品展」出品作紹介※日本画《こう

令和5年2月17日


日本画《こう》 文化功労者 田渕俊夫たぶちとしお

 作者が創造する絵画世界は、主題や技法によって、大きく幾つかのグループに分ける事が出来ます。最初期のグループは水面に映える光を印象的に描いたもの、次が自然の中で逞しく生きる植物の姿を克明に描写したもの、長い時間の積み重ねにより存在している風景の一瞬を切取った「刻(とき)」のシリーズなどです。これらを漢字一文字で表すならば、「光」「命」「刻」となりますが、最近はこれらのテーマを組み合わせ、止揚させた作品を数多く制作されています。平成21年に制作発表された本作品も三つのテーマを内包したものと考えられます。
 雲海の中から白い線がうねりながら垂れ、まるで雷か竜巻が発生しているかのような光景。近年の異常気象を写したような画面で、光によって表現された自然の意思、その一瞬を捉えた作品です。これら自然の気紛れな「意思」に対して我々はただ恐れるしかない状況ですが、「恐れ」という意味の「惶」を題名としているのはまことに当を得た配慮と思われます。『雷様と敬うような言い方をしますが、それは、恐れの中にも畏敬の念を感じているからだと思います』と、作者は我々日本人の性向についても述べています。
 作者は昭和16年に東京に生まれました。36年には東京藝術大学美術学部に入学、40年に大学を卒業し、大学院に進みました。大学院修了の42年に春の院展に初入選すると、45年に院友に推挙、60年には同人となります。日本画は平山郁夫に師事しました。また長年美術品の保存修復にも携わっています。平成30年「第100回院展」に出品した《渦潮》で日本藝術院賞を受賞しました。令和元年文化功労者に認定。また大嘗祭のために《悠紀地方風俗歌屏風》を制作しています。

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