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徴古館

神宮徴古館展示資料紹介《文正草子》

令和4年12月26日


 この度11月19日より展示替に伴い常設展のリニューアルをしました。伊勢神宮の歴史と文化の総合博物館として、神宮の創祀から近代まで時代ごとに様々な資料をご覧頂く機会を設けることに努めました。中世のコーナーでは主に遷宮の古記録や絵巻などの資料を用いて、当時の文化的な側面に触れて頂きます。その中から《文正草子ぶんしょうぞうし》をご紹介します。
 《文正草子》は室町時代に成立した御伽草子の1つで、本資料は書体や画風から室町時代後期に書写されたものと推測されています。その内容は常陸国で鹿島大明神の大宮司に仕えていた文正が大宮司から勘当されたことを契機に塩焼きとして財を成し、最終的に2人の娘が帝と中将にそれぞれ嫁入りし末永く栄える、というめでたづくめのストーリーです。江戸時代には女子の読み初め用の本として広く親しまれました。また神に祈りを捧げて子を成すという申子譚もうしごたんにも当たる構成からは、当時の人々の神仏に対する信仰の在り方の一側面を読み取ることもできます。
 また、本資料を語る上で欠かせないのは、この品が江藤正澄えとうまさずみ旧蔵資料の中のひとつという点です。江藤正澄は国学者であり、主に考古資料の蒐集研究の功績で知られています。太宰府神社などで神官を務め、明治10年に職を辞し福岡で古書店を営んだ後、明治29年にその生涯の収集品のほぼ大半を徴古館に奉納しています。そのジャンルは多岐にわたり、重要文化財である《据台付子持はそう》を始めとする考古品や工芸品、書蹟類等優品の数々は徴古館創設期における資料構築の一端を担ったといえるでしょう。書かれた内容だけでなく資料の背景となる歴史にも思いを馳せていただければ幸いです。

関連情報
《据台付子持はそう》

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