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美術館

「和の饗宴ー神宮美術館アーカイブスⅠー」出品作紹介 染織《友禅小屏風「伝説」》

令和3年4月29日


染織《友禅小屏風「伝説」》 重要無形文化財「友禅」保持者 山田 貢 

 秋田県の田沢湖には魚に纏わる伝説があります。田沢湖は我が国で最も深い湖で、後に日本百景にも選ばれた景勝地でもあります。しかし戦時下の昭和15年、電源開発計画のもと発電所が作られる事となり、水位調節の為に近くの玉川から強酸性の源泉を含んだ水が導入され、それまで湖に棲息していた国鱒、雨鱒、鱨、岩魚、鯉、鯰、鰻等の魚類が絶滅してしまったのです。本作品はこの伝説をもとに制作されました。(以上作者による)
 麻地に糯糊防染を施し、顔料には墨や本朱を用いて友禅染めされています。魚達の表情には険があり、それでいてどこか惚けた味わいもあります。丹絵の彩色によって描かれた巴水文が渦巻きを表現するように効果的に用いられています。作者の屏風や壁掛けなどによく登場するモチーフです。作者は多くの着物を製作しましたが、他方このような軽い味わいの小屏風や壁掛けも作っています。

 作者は明治45年岐阜県に生まれ、大正15年中村勝馬に師事して手描き友禅、鑞染めを学びました。昭和26年友禅作家として独立。32年第四回日本伝統工芸展で初入選。43年日本工芸会受任理事、染織部会長に就任。52年第二四回日本伝統工芸展日本工芸会賞受賞。56年日本工芸会工芸技術保存事業「茶屋染帷子の復原」に参加、糸目糊を担当。58年勲四等瑞宝章受章。59年には重要無形文化財「友禅」保持者に認定されました。平成14年逝去。

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